バイクを長期保管するときのガソリンはどうする?満タン/空・燃料劣化とキャブ詰まり対策

「冬の間バイクに乗らないけれど、ガソリンは満タンのままでいいの?それとも抜いておくべき?」。長期保管を前に、多くの方が迷うポイントです。
答えは、満タンに近づけて燃料安定剤を入れ、エンジンを数分回して燃料系統まで行き渡らせる、が基本です。放っておいた燃料は劣化して、キャブレターや燃料配管を詰まらせるからです。
この記事の要点
- 燃料は数週間で劣化し始め、ベトベトした汚れが燃料系統を詰まらせる
- 保管前は満タン+燃料安定剤。給油したら数分エンジンを回す
- キャブ車で燃料コックがあれば、乗らない間はOFFにしておく
- 抜いたガソリンは地面や下水に流さない。容器は消防法令に合った携行缶
長期保管でガソリンが問題になる理由
長く置いたガソリンは劣化して、燃料系統を詰まらせます。燃料は数週間で劣化し始め、ベトベトした汚れがフューエルインジェクター・キャブレター・燃料配管を詰まらせます。清掃は難しく費用もかかり、多くの場合プロの修理が必要です(ミシュラン)。
この記事の要点
- ガソリンは時間とともに劣化する
- 劣化した燃料はガム状の沈殿物を残し、燃料系統を詰まらせる
- タンクの空いた空間で結露が起き、タンクのサビの原因になる
長期間保管したガソリンは「粗悪ガソリン」として、使わないよう指定されています(ホンダ タクトの取扱説明書)。
粗悪ガソリンなど指定以外の燃料は、エンジンの始動性の悪化や出力低下の原因になります(ヤマハ YZF-R25の取扱説明書)。
満タン保管 vs 空にする、どっち?
長期保管では、タンクを満タンにするほうを選びます。保管中にガソリンを入れたままにしておくと、サビの原因になる結露を防げるからです(ミシュラン)。
「空にすれば燃料が劣化しないのでは?」と考えるかもしれません。ただ、空いたタンクの中は結露して、サビの原因になります。ミシュランの保管手順も、結露する空間を小さくするために新しい燃料で給油するやり方です。
ひとことメモ
燃料安定剤(フューエルスタビライザー)は、ガソリンの劣化を抑える添加剤です。保管前にタンクへ入れ、分量はメーカーの説明書に従います(ミシュラン)。
車両側の指定もあります。ホンダ タクトの取扱説明書は、不適切な燃料添加剤を使わないよう指定しています。車両の取扱説明書と製品の表示で、使えるものか確かめてから入れてください。
燃料劣化はどのくらいで進む?
燃料は数週間で劣化し始めます(ミシュラン)。どれくらい放置できるかは、車種や年式、保管環境によって大きく変わります。日数で区切らず、乗らない期間に入る前に手を打っておきます。
寒い環境では、燃料の劣化でガム状の沈殿物ができ、燃料系統を詰まらせる恐れがあります。ミシュランは対策として、燃料に安定剤を入れることを挙げています。
保管前に安定剤を入れなかった燃料を長く置いたときは、そのまま使わないでください。長期間保管したガソリンは、使わないよう取扱説明書が指定しています。
ひとことメモ
給油するのは、車両の指定燃料です。ホンダとヤマハの取扱説明書は、高濃度アルコール含有燃料を入れないよう指定しています(タクトの取扱説明書・YZF-R25の取扱説明書)。
キャブ車の対策|燃料安定剤を回して燃料コックはOFF
用意するもの
キャブ車も、燃料安定剤を入れてエンジンを数分回すところまではFI車と同じです。安定剤を入れて給油したあと数分エンジンを動かし、処理した燃料を燃料系統全体に届けます(ミシュラン)。
新しいガソリンで満タン近くまで給油する
結露する空間を小さくする
燃料安定剤を入れる
分量は製品の説明書どおり。使えるかは車両の取扱説明書で確かめる
エンジンを数分回す
安定剤入りの燃料を燃料系統全体に行き渡らせる。風通しのよい屋外で
燃料コックをOFFにする
コックのある車種。OFFではキャブレターにガソリンが流れない
燃料コックのある車種は、乗らない間はOFFにしておきます。ホンダ エイプ50(キャブ車)の取扱説明書では、OFFはキャブレターにガソリンが流れない位置です。乗車するとき以外は、この位置にするよう書いています(エイプ50の取扱説明書)。
車種によっては、フロート室の底のドレンからキャブ内のガソリンを抜くこともできます。ドレンの位置と手順は車種ごとに違います。取扱説明書や整備書で手順を確かめられない場合は、販売店に任せてください。
安全の注意(必ず読んでください)
ガソリンは燃えやすく、ヤケドを負ったり、爆発して重大な傷害に至ったりする可能性があります。身体に帯電した静電気の火花でも引火します(タクトの取扱説明書)。
- 作業は屋外で、エンジンを止めて火元を遠ざける
- 作業前に車体の金属部分に触れて、身体の静電気を除く
- こぼれたガソリンはすぐに拭き取り、ドレンから抜いたガソリンを受け皿に置いたままにしない
- エンジンをかけるのは風通しのよい場所で(排気ガスに一酸化炭素が含まれる)
不安な場合は、無理をせず販売店に相談してください。
FI(インジェクション)車の対策|満タン+燃料安定剤が基本
FI車にはキャブレターがないので、キャブ内のガソリンを抜く作業はありません。対策は、満タン+燃料安定剤と、給油後に数分エンジンを回すことです(ミシュラン)。
FI(燃料噴射)は、ポンプで圧力をかけたガソリンを、インジェクターの細い孔から噴射する方式です(ヤマハ発動機)。劣化した燃料はインジェクターや燃料配管も詰まらせるので、FI車でも安定剤は省きません。
キャブ車かFI車かは、取扱説明書や諸元表で確かめます。最近はFIのモデルが主流で、現行のヤマハ製品の多くがFIを採用しています。古い年式の車種は、思い込みで判断しないでください。
ひとことメモ
FI車の燃料系統(燃料ポンプ・インジェクター)は、自分で分解して燃料を抜かないでください。タクトの取扱説明書は、ガソリンがあるのに走行中に一時的なエンジン不調が起きたら、直ちに販売店に相談するよう書いています。燃料ポンプのフィルターがつまると、減速が散発的に起きることがあるためです。
ガソリン以外にも同時にやっておきたい保管対策
長期保管では、ガソリンと同時にバッテリー・タイヤ・車体も整えます。寒さ・湿気・長期間の放置は、バッテリーや燃料系、エンジンに悪影響を与えることがあるからです(ミシュラン)。
バッテリーは、使わない間にも自然に放電します。タイヤは同じ場所で長時間接地していると、フラットスポット(変形)ができることがあります。
この記事の要点
- バッテリーは車から外して満充電にする。積んだままなら、マイナス端子を外す
- 外したバッテリーは、2〜3か月に一度は補充電する
- タイヤはメーカー推奨の空気圧まで補充し、スタンドで浮かせる
- 屋外ならボディーカバーをかける(エンジンやマフラーが冷えてから)
- 保管前にワックスがけをして、サビを防ぐ(つや消し塗装の面を除く)
バッテリーの扱いはGS YUASAとタクトの取扱説明書の指定です。それぞれの詳しいやり方は、雨ざらし保管の対策、サビ防止のコツ、バイクカバーの選び方で解説しています。
ガソリンの保管・抜いたガソリンの扱い方
抜いたガソリンは、地面や下水に流さず、消防法令に合った容器で扱います。ガソリンは消防法の第一石油類にあたり、入れる容器や保管できる量にも決まりがあります(消防法 別表第一)。
ガソリンは、気温がマイナス40度でも気化し、小さな火源でも爆発的に燃えます。蒸気は空気より重く、穴やくぼみにたまります。離れた所にある火源(裸火・静電気・衝撃の火花など)でも引火します(総務省消防庁「危険物規制」)。
安全の注意(必ず読んでください)
- 抜いたガソリンを地面や下水に流すのは、廃棄物処理法が禁じる投棄にあたり、引火の危険もあります(廃棄物処理法 第16条)。処分は、ガソリンスタンドや販売店に相談してください。
- ガソリンを入れる容器は、消防法令で一定の強度が求められ、材質ごとに容量が制限されています。灯油用のポリ容器にガソリンを入れるのは禁止されています(総務省消防庁)。
- 合計40L以上のガソリンを保管するには、消防機関への届出や許可、保管場所の構造の基準が必要になります。
- 携行缶は、直射日光の当たる場所や高温の場所に置かず、日陰の風通しの良い場所に置きます。フタとエア抜きは、使ったあと確実に締めます(総務省消防庁「ガソリン携行缶を安全に取り扱うための留意事項について」)。
- フタを開ける前に、周りに火源になりそうな物が無いかを確かめ、少しずつエア抜きをします。
- 日なたなどで携行缶が温まっているときは、フタもエア抜きも開けません。日陰の風通しの良い場所に移し、ガソリンが常温に下がるまで置きます。
蒸気がこもりやすい車内や屋内に、ガソリンを長く置かないでください。蒸気は低い所にたまり、思わぬ火源で引火します。
保管後の再始動の流れ
乗り始める前は、バッテリーを充電し、各部を点検してから始動します。長期保管後の走行前には、バッテリーの充電と各部の点検をするよう指定されています(YZF-R25の取扱説明書)。
燃料を確かめる
安定剤を入れずに長く置いたガソリンは使わない
キャブ車は燃料コックをONに戻す
ONでキャブレターにガソリンが流れる
バッテリーを充電・接続する
外していた端子を戻す
プラグの状態を目で見る
カーボンで黒くすすけていたら清掃・交換を考える
エンジンを始動する
セルを回し続けない。秒数の上限は車種の取扱説明書で確かめる
長く使わなかったあとは、ガソリンを入れてもエンジンがかかりにくいことがあります。
タクトの取扱説明書は、スターターモーターを連続して15秒以上回さないよう指定しています。15秒回してもかからなければ、メインスイッチを一度OFFにして10秒以上待ち、始動し直します(タクトの取扱説明書)。
プラグにカーボンが付くと、失火して始動不良などを起こします(NGK)。それでもかからない・暖まってもアイドリングが安定しないときは、キャブレターの汚れも疑います(キャブレター詰まりの症状と掃除)。不安があれば販売店に相談してください。
まとめ
- 燃料は数週間で劣化し始め、キャブレターや燃料配管を詰まらせる
- 保管前は満タン+燃料安定剤。給油後に数分エンジンを回して行き渡らせる
- キャブ車は燃料コックをOFFに。キャブ内のガソリンを抜くのは手順を確かめられる場合だけ
- FI車にキャブ抜きの作業は無い。燃料系統の分解は販売店へ
- 抜いたガソリンは流さない・灯油用ポリ容器に入れない。処分はガソリンスタンドや販売店に相談
- バッテリー・タイヤ・カバーの準備もあわせて行う
保管の準備全体は保管・サビ・カバー 総合ガイドと雨ざらし保管の対策にまとめています。
よくある質問
長期保管するならガソリンは満タンと空、どちらが正解ですか?
満タンに近づけて、燃料安定剤を入れるのが基本です。タンクにガソリンを入れておくと、サビの原因になる結露を防げます。安定剤を入れて給油したら、数分エンジンを動かして燃料系統全体に行き渡らせます。使える添加剤かどうかは、車両の取扱説明書と製品の表示で確かめてください。
ガソリンはどれくらいの期間で劣化しますか?
燃料は数週間で劣化し始め、ベトベトした汚れになってキャブレターやインジェクター、燃料配管を詰まらせることがあります。長期間保管したガソリンは使わないよう、ホンダの取扱説明書は指定しています。乗らない期間が長くなる前に、燃料安定剤を入れておきましょう。
抜いたガソリンはどう処分すればいいですか?
地面や下水に流すのは、廃棄物処理法が禁じる投棄にあたり、引火の危険もあります。処分はガソリンスタンドや販売店に相談してください。一時的に入れておく容器は、消防法令の基準に合ったガソリン携行缶を使います。灯油用のポリ容器にガソリンを入れるのは禁止されています。
FI車でもキャブ車と同じように燃料を抜いたほうがいいですか?
FI車にはキャブレターがないので、キャブ内のガソリンを抜く作業はありません。劣化した燃料はインジェクターや燃料配管も詰まらせるため、FI車も満タン+燃料安定剤で保管します。燃料系統の分解は自分でせず、販売店に相談してください。
